「子育てサポートセンターきらきらくらぶ」代表の林恵子さん。この日は17人の子どもがやってきた(福井県敦賀市で取材)
あの手この手の子育て支援で、低下する出生率を反転させた福井県。その取り組みに学ぼうと、各地から視察が相次いでいます。手厚い支援の象徴が、県内の17施設で実施されている、病気や回復期の子どもを看護師らが預かる「病児デイケア」です。
福井市にある産婦人科と小児科の病院「福井愛育病院」は2005年11月、駐車場だった場所に病児保育施設「愛育ちびっこハウス」を開きました。「利用者は月に一けた」と言われた当初の予想ははずれ、毎月200〜300人が利用する“人気ぶり”。八つの小部屋で、はしかやかぜなど病気ごとに分けて預かります。
夕方5時半に迎えに来た理学療法士の母親は、預けていた二男を抱き上げるとホッと笑顔を見せました。「今日が育児休業の復帰日だったのに、数日前から熱が出た。おばあちゃんは旅行中だし、ここがあって助かりました」と話します。
福井県と市の補助で、1日4370円の利用料が市内在住者らは2000円ですみます。第3子からは無料。
子どもの急病は働く親の代表的な悩みだが、全国に約600か所ある病児病後児保育の多くは回復期の「病後児」が対象。需要が高い「病児」対象の施設は今も限られます。
「病気の時くらい親は休むべきだという声も当初聞いたが、最近はない。これまで病児は両親か祖父母が世話してきたが、公的な支援も必要になっている」と看護部長の岸上きみえさんは話します。
同県では、女性たちの「こんな時に困る」という声を拾い、きめ細かな育児支援策を積み上げてきました。一時保育や子どもの送迎などを気軽に頼める「すみずみ子育てサポート事業」も、その一つです。
同県敦賀市にあるNPO法人「子育てサポートセンターきらきらくらぶ」は、この事業の委託を受けて、一時預かりの保育室を運営しています。「病院に行きたい」「ダンスを習う」など様々な理由で母親たちが一時保育を利用します。県と市の補助があるため、市民の利用料は1時間350円と低額。毎月400人以上の利用があります。
「自分も子育てで困った経験があるから、お母さんたちを助けてあげたい」と代表の林恵子さん(49)。利用者には3人目、4人目を出産する人が目立ち、「ここがあったから3人産もうと思えた」と言われるといいます。
少子化が進む自治体で、住民調査から浮かんでくるのは「子どもの病気で仕事を休んでクビになった」「求職活動中に保育が利用できない」といった親たちの悩みです。そうしたニーズの隅々にまで届く支援を目指す福井。県と市町の共同事業である「すみずみ子育てサポート事業」の実施は今、9市1町の24団体にまで広がった。(読売新聞)
国内のチャイルドシートの出荷数が減少の一途をたどっています。日本自動車部品工業会(部工会)が今月発表した調査結果によると、昨年の出荷は前年比6.0%減の108万6655台。着用が義務付けられた平成12年に282万台に達した台数が3分の1近くまで落ち込んだ計算になります。メーカー側は装着しやすいようチャイルドシート本体や乗用車の座席などに工夫を凝らすが、肝心の着用率は向上しない状況です。
部工会によると、特に出荷台数が低下したのは、4〜10歳向けの「学童用」で同15.7%減の約42万台と大幅減となった。一方で、新生児から1歳くらいまでの「乳児用」や1〜4歳向けの「幼児用」は微減にとどまっています。
少子化の影響も大きいが、それ以上に問題なのは順法精神の低さ。チャイルドシートは6歳未満に着用が義務づけられているが、「子供が5歳ぐらいになればチャイルドシートは必要ないと感じる親が多いようだ」(部工会)ということ。
これを裏付けるデータもあります。警察庁と日本自動車連盟(JAF)が7月にまとめた調査では、6歳未満の子供のチャイルドシート使用率は全体で46.9%にとどまり、3年ぶりに減少。4年連続で5割を下回りました。やはり年齢層別では1歳未満が73.7%と高かったのに対して、5歳は25.0%と低く、さらに、ベルトの締め付け不足など7割以上が取り付け方に不備がありました。
チャイルドシートのメーカーも取り付けが簡単な商品を次々と投入しているが、最近では自動車メーカー側からのアプローチもあります。後部座席にチャイルドシート固定機能が付いたシートベルトを備えた車も多くなってきました。
さらに、6月にトヨタ自動車が発売したミニバン「ヴォクシー」「ノア」にはチャイルドシートを装着した場合に子供を乗降させやすいよう、2列目の座席が外側に回転する機能を新たに導入しました。
事故が起こった際、チャイルドシートを着用しているケースと非着用のケースとでは、致死率に3倍もの開きが出るとされます。部工会などは引き続き、チャイルドシートの装着方法を指導するなどの啓発活動を強化していく考え。(産経新聞)
■露出少ない水着、大きな幌のベビーカー
子供用の紫外線対策グッズが昔に比べてよりおしゃれに、より厳重に進化しています。子供の紫外線対策に関する母親の意識は高まっており、紫外線カットの子供服が売り上げを伸ばすなど市場は拡大。赤ちゃんを幌ですっぽり覆うカプセル型のベビーカーや肌の露出部分が少ない水着も売れ筋となっています。
≪高まる親の意識≫
ダンガリーシャツにマリンパンツ、そしてテンガロンタイプの帽子…。子供が着用するこれらのおしゃれな服は、すべて紫外線カット商品。
子供専門の紫外線対策ウエアのブランド「エポカル」を展開するのはピーカブー(埼玉県和光市)。現在、紫外線対策の洋服やグッズ約80点を販売しており、トータルコーディネートできます。
ブランド誕生のきっかけは、松成紀公子社長の長男がアトピーで、日焼けによる肌のダメージを受けやすかったこと。当時、紫外線への関心は低く、紫外線カットの洋服は少なかったのです。そこで「自分で作ろう」と子育て仲間を誘って平成14年、会社を設立しました。松成社長は「母親の視点に立ち、紫外線カットの洋服に見えず、なおかつ子供に着せたい服を作った」と話します。
商品には、母親ならではのアイデアが散りばめられています。最も売れている「タウンメッシュUVブレーカー」は、ファスナーのつまみ部分が紫外線に当たると色が変わり、日が当たらない部分はメッシュ生地にして通気性を良くするなど工夫しました。「親子で紫外線対策ができれば」と、大人用も発売したところ「子供とペアで着たい」と注文が殺到。今季はすでに約6000枚が売れました。他にも、虫除けを兼ねた日焼け止めクリームや長袖長ズボンの水着などが売れ筋といいます。
会社の設立当初、売り上げは年間数百万円程度でした。しかし、年々倍増し、昨年は8000万円以上になりました。松成社長は「今は、子供への紫外線が有害という意識が母親に浸透しつつある。『こんなのも作ってほしい』という要望も多い」と話します。
ロート製薬(大阪市)が昨年6月、0〜2歳の子供を持つ母親300人に行ったアンケートによると、「子供の紫外線対策は必要」と考える母親は95%に上りました。回答した母親のうち、子供のころ「日光が体に良くない」ときちんと認識していたのは5%にすぎず、アンケートからも今と昔では、子供の紫外線対策に対する意識が大きく変わったことがわかります。
こうした背景から、子供用の紫外線カットの洋服やグッズを扱う会社は徐々に増えています。オーストラリアから紫外線カットの水着や帽子を輸入、通信販売するシーネット(横浜市)は大人、子供用合わせて約50種類の紫外線対策グッズを扱います。子供用では、ほぼ全身を覆うスイムスーツやスイムシャツ、後ろに「垂れ」のついた帽子などを販売。どれも色鮮やかでかわいい。同社の内海秀治代表も「商品への問い合わせは増えている」と話します。
≪拡大する市場≫
ベビー用品メーカーの紫外線対策の商品も徐々に進化しています。数年前までは、ベビーカーの幌が小さいため、バスタオルなどをかぶせて、赤ちゃんへの直射日光を避けるのが見慣れた光景でした。今では赤ちゃんを幌ですっぽり覆えるタイプが登場。13年ごろから、このタイプのベビーカーを販売するコンビ(東京都台東区)は「幌が大きいタイプは人気が高い」と話します。
ピジョン(東京都中央区)は、乳液やローションなど計5アイテムの乳児用紫外線ケア商品を販売。3月には、じっとしていない子供にも塗りやすいスティックタイプの日焼け止めを発売しました。売り上げは好調で、同社広報は「水遊び用など、どんなシーンでも確実に対応できるよう種類を増やしてきた」といいます。(産経新聞:神田さやか)